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めをひらく

眼を開く

夢野 久作

「逓信協会雑誌」1935(昭和10)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,759 字 · 20 页

青空文庫

私がビックリして飛び起きながら窓を開くと、ドッと吹込む吹雪と共に、松明の光りが二つ三つチラチラと渦巻いて見えた。その松明の持主の顔はわからないが、皆藁帽子を冠り、モンペと藁靴を穿いて、ちょうど昔の源平時代の落人狩りを忍ばせる身ごしらえであった。

「先生。先生。吉で御座います」

「おお。吉兵衛どんか。何しに来なすったか。この真夜中に……」

「ほかでも御座いませぬ。昨日か一昨日、ここへ郵便屋の忠平が来はしませんでしたろうか」

「……忠平……ああ、あの郵便屋さんは忠平というのか」

「さようで御座います先生様。参りませんでしたろうか」

「いいや。この二三日来なかったようだがね」

松明連中が吹雪の中で顔を見合わせた。

「ヘエ。やっぱり……それじゃ……」

「……かも知れんのう……」

私たちの話声は山々を轟き渡る吹雪の風に吹き散らされて、ともすれば松明の光りと共に消え消えになって行くのであった。

「まあこちらへ這入って来なさい。そこの戸は押せば開くから……」

皆ドカドカと土間へ這入って来た。

「おお。暖い暖い」

「成る程なあ。これが温突チューもんですか先生……」

皆ガヤガヤと話し出した。