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ちちぶきこう

知々夫紀行

幸田 露伴

「太陽」博文館、1899(明治32)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,784 字 · 31 页

青空文庫

塚のやや円形に空虚にして畳二ひら三ひらを敷くべく、すべて平めなる石をつみかさねたるさま、たとえば今の人の煉瓦を用いてなせるが如し。入口の上框ともいうべきところに、いと大なる石を横たえわたして崩れ潰えざらしめんとしたる如きは、むかしの人もなかなかに巧みありというべし。寒月子の図も成りければ、もとのところに帰り、この塚より土器の欠片など出したる事を耳にせざりしやと問えば、その様なることも聞きたるおぼえあり、なお氷雨塚はここより少しばかり南へ行きたる処の道の東側なる商家のうしろに二ツほどありという。さらばそれも見んとて老媼にわかれ立出で、それとおぼしき家にことわりいいて、突と裏の方に至り見るに、大さのやや異なるのみにて、ここのもそのさま前のと同じく、別に見るべきところもなし。ただここにはそれと知れたる外に、穴の口全く埋もれしままにて、いまだ掘発さざるがありて、そぞろに人の事を好む心を動かす。されど敢て乞うて掘るべくもあらねば、そのままに見すてて道を急ぎ、国神村というに至る。この村の名も、国神塚といえるがこのあたりにあるより称えそめしなるべし。

今宵は大宮に仮寝の夢を結ばんとおもえるに、路程はなお近からず、天は雨降らんとし、足は疲れたれば、すすむるを幸に金沢橋の袂より車に乗る。