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いしころ
石ころ
山本 周五郎
「富士」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,450 字 · 23 页
なんと浅薄な独りよがりな考えだったろう。世間の風評を嗤いながら、自分も良人の真実をみつけることができなかったのだ。――申しわけがございません、あさはかな松尾をおゆるし下さいまし。父の家を辞して屋敷へ帰るまで、松尾は心のなかでそう叫びつづけていた。そして屋敷へ帰り着くとすぐに、いつかの手箱をとりだして来て蓋をはらった。……そこにはまえのとおり綿を敷いて、幾つかの小石がはいっていた、形も色も平凡な、なんの奇もない路傍の石である。じっと見ていると、「おれはこんなのが堪らなく好きだ」という良人の声が聞えるようだった。
「あなた、……おりっぱでございます」そう呟きながら、松尾はたえかねてくくと噎びあげた……やがて良人が凱旋すれば、そこにまた石が一つ殖えることだろう。人には見えないが多くの功名と手柄を象徴する平凡な一つの石が……。