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いしべいゆうれい
石塀幽霊
大阪 圭吉
「新青年」1935(昭和10)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,907 字 · 26 页
「こ、この人達に、違いありません」
そこで司法主任は、一段と厳重な追求をはじめた。ところが秋森家の双生児は、二人ともつい今しがたまで裏庭の藤棚の下で午睡をしていたので、なにがなんだかサッパリ判らんと答え、犯行に関しては頭から否定した。前庭などへ出たこともない、とさえ云った。
そこで二人の女中が改めて呼び出された。ところがナツと呼ぶ歳上のほうの女中は、老主人の係りで殆んど奥の離れにばかりいたから、母屋のことは少しも判らないと答え、キミと呼ぶ若いほうの女中は、二人の若旦那が藤棚の下で午睡をしていられたのは確かだが、実は自分もそれから一時間程午睡した事、尚事件の起きあがる少し前頃に何処からか電話がかかって来て、家政婦のそめ子が留守を頼んで出て行ったが、何分夢うつつでボンヤリ寝過してしまい申訳もありませんと答えた。
このように女中の証言によっても、双生児の現場不在証明は極めて不完全なものであったし、何よりも悪いことには、訊問が被害者の戸川そめ子の問題に触れる度に、双生児は何故か妙に眼をきょとつかせたり臆病そうに口籠ったりした。この事は明かに係官の心証を損ねた。