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せきゆのみやこバクーへ
石油の都バクーへ
宮本 百合子
不詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,004 字 · 16 页
それぞれの共和国の内政は或る程度まで自主的に行われているのであった。
傍の小さい新聞屋台で、『レーニンの孫』というこの地方のピオニェール新聞を買い、ソヴェト同盟の広さというようなことを強く感じながらホテルの玄関を入り、右手の広間へ通った。瓦斯燈の水っぽい光が、ゴムのような滑らかな大きい葉の植木を照している。その陰から立って挨拶したのは、その頃ピリニャークにくっついて歩いていた作家リージンとその妻であった。若い詩人夫妻の伴れがある。正直に云うと、自分はこの高いダブル・カラーをつけ、桃色の頬ぺたをして外国商館の番頭に似た作家を余りすいているとは云えないのである。
ところが、このリージン氏が明朝自分たちもグルジンスカヤ山道をチフリスへ行くから一つ仲間にならないかと申し出た。自動車の坐席の都合からである。こちらも女二人きりよりはその方がよい。そう思い、承諾して、朝になった。
自動車へ乗込むという段になって、悶着が生じた。リージンは前夜六人乗の自動車を註文したのに、髭の濃いコーカサス男の運転して来た車は四人乗ともう一つは二人乗で、計らず四人組、二人組と別れ別れにならなければならなくなったのである。