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ガラスをやぶるもの

硝子を破る者

中谷 宇吉郎

「朝日評論」1946(昭和21)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,761 字 · 14 页

青空文庫

電話をむやみとかけるのは、結局用が足らないからである。番号を間違えれば、改めて掛け直すから、それだけ忙しくなる。もっともそのために通話回数が増えることぐらいは、多寡が知れているが、それよりも恐しいことは、人心をいらだたすことである。その点は番号の間違いばかりが問題ではなく、受話器を取ってから、三分も五分も待たされれば、大抵の人はいらだって来る。人心がいらだって来れば、手紙や葉書で済む用事にまで長距離電話をかけるような風潮になる。一度で済む電話を二度かけるのも、その症状の一つの現れである。そのために「お話中」が増え、それがまた人心をいらだたせ、益々電話を繁忙にする。こうなっては正に病的の現象である。

電報も同じことである。文字が滅茶苦茶に間違っていて、どうしても意味が分らない。そのために問合せの電報を打って返事をとるので、一度で済むことが三倍の手間を要することになる。間違っていなくても、ひどく遅延したために、もう用件が間に合わなくて、断りの電報を打つ。それに対してまた電報が来る。これでは電信係の人もたまらないことであろうが、われわれも非常に迷惑する。