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ひぶん

碑文

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,294 字 · 27 页

青空文庫

徐和も熱心に仕事を手伝い、自ら鍬を執ることもありました。

曹新は何気なく池の中におりて行き、鍬を手にしている徐和とばったり出逢った時、その前に立止って、探るような視線をなげかけました。

「伯母さんは、実際、このようなことを望まれたことがあるのかね。」

「よくは存じませんけれど、お望みになられた筈でございます。」

「なに、望まれた筈だと………。」

「左様に存じます。」

汗かいたその浅黒い顔には、言葉以外に何物も浮んではいませんでした。曹新が黙っていますと、彼は呟くようにいいました。

「私は早く仕上がるようにと思いまして、出来るだけ手伝っております。」

「早い方がよいのかね。」

「はい、こんどのことに限って、旦那様はお気が長うございます。それもまあ、仕方がございません。」

へんに底まで見通しているようで、しかもそれを顔に現わさない様子と、仕方がないという最後の言葉とに出逢って、曹新はちらと眉をしかめ、そのまま歩き去ってしまいました。そして池から出るとほーっと大きく息をしました。

その翌日の夕方のことでした。徐和が一人で池の底にいて、深さや縁取りの工合を見調べ、腕を拱いて考えていました時、突然、頭の上から、巨大な太湖石が崩れ落ち、彼は声を立てるまもなく岩角に頭と背とを砕かれました。