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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

ばかりではなく、恐らく当局自身残念がっていることだろうと思う。何等かの道徳的効果を挙げようという思想的動機から発動した風紀警察自身も、ここまで来ると、却って思想警察と抵触することとなる。困難なのは風紀警察であり、之を更に困難にするものは思想警察なる哉である。

(一九三四・一)

博士ダンピングへ

一、医学博士の家元制度

下関の或る開業医が、長崎医科大学学長を相手取って、自分が同大学へ提出しておいた学位請求論文を審査すべからずという仮処分方を、裁判所に申請した事件があった。結果に於て同医師の申請は却下されたが、この風変りの訴訟に対して世間の注意深い人達は一寸奇異の感を懐かざるを得なかっただろう。「博士濫造」という廉でかねがね世間から胡散臭いものと見られている医学博士に関することだから、どうせ何か裏に変なことが潜んでいるのだろうと思っていると、果してこの事件をキッカケに、長崎医大の「学位売買事件」なるものが展開して来たのである。何と云っても「医学博士」には散々苦しめられて来ている世間の大衆は、それこそ江戸の仇を長崎で討ったように、私かに、やや見当違いな溜飲を下げているものもいるようである。