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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

事件の真相は無論まだ判らないが、長大の勝矢教授が弟子を博士にしてやる毎に数百円ずつの金を取っており、又その他様々な収賄をやっていたということが判ったらしく、これに就いて贈賄者として四五名程の同博士門下生の博士達がいるのだそうで、この六名は遂に強制収容の上起訴されて了った。収賄の嫌疑濃厚なものは少くとも他に二名の教授を数えることが出来、また贈賄の容疑者は全国に及ぶかも知れないということである。それからこの問題は単に独り長崎医大だけの問題ではなく、全国医科大学乃至は医学部にも拡大するかも知れないと云われている。そうなると又、単に医科や医学部ばかりではなく他学部にも飛火するのではないかと心配する向きさえあるようである。

長崎医大では、当の勝矢博士の弟で矢張医学部教授をしている人が、大学の不潔を潔しとしないで辞職するし、学生は勝矢博士以下三教授の試験を受けないと主張するし、学生、卒業生、助手、助教授達は大学浄化の運動を巻き起こそうとしている。確かにこれは祓い潔めの儀式としては甚だ当を得た行動だと思うが、儀式は要するに儀式に過ぎない、「医学博士」の本質はそうむやみに祓い潔めることの出来るものではないのだ。