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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

誠に憂慮に耐えない傾向と云わねばならぬ。

今日普通の人間世界ではエロティシズムの全盛である。夫が嘘なら最近着々として発禁になりながら而も着々として殖えて行く各種の「実話」雑誌の大勢を見るが好い。処がこういう「唯物思想」(?)の他方の片割れである「赤」はどうか。赤の陣営が全滅したということを耳にするが、そういう声は昔から何遍でも聞いたものである。之も嘘だと思うなら和仁大審院長以下七名が部下から赤い司法官を輩出した廉で最近懲戒訓告の処分を喰っているのを思い出して欲しい。

処で不良華族のエロティシズムと平行して赤い華族が出始めた。即ちこの点でも亦、華族は普通の人間世界の真似を始めたのである。そこで治安維持法で起訴されるだろう華族の三子弟に対しては、例の宗秩寮審議会は除族乃至位記返上の処分を発表するだろうし、転向を誓って釈放された六名の者に対しては訓戒を加えるだろうと報じられている。読売新聞(十二月二十二日付)によると「これは今回の『華族の体面を汚辱する失行ありたる者』という単なる華族の素行上の問題とは異り、いやしくも皇室の藩屏として御信任厚き身でありながら、国体を否定する如き思想、行動に入ったという処にその問題の重大性が」