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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

だが、大事な点は、婦人雑誌は決して実際的に結婚の媒介をしようとする意志があるのではないことだ。

名流家庭の夫人や令嬢や映画俳優は、結婚の紹介をするためにではなくて、単に結婚観念を刺※するためにその写真を並べているのだ。で婦人雑誌の結婚専門雑誌たる所以は、今日わが国などで一等欠けている合理的な結婚施設や、又世界各国で見失われた結婚の物質的地盤などを、提供する点にあるのではなくて、ただでさえ過剰を来している結婚観念を意地悪くいやが上にも緊張させる役目にあるのである。婦人雑誌は、結婚よりも寧ろ結婚観念を享受したがっているわが国の既婚未婚の婦人達を、その読者としているから売れるのであるらしい。

婦人雑誌のことはどうでもいいが、とに角婦人達のこの緊張した結婚観念に思い切ったショックを与えたのが、黒田嬢の独自な勇敢な決意だったわけである。日本の婦人達は之を聞いて、さぞかし安心もしただろうし、又悲観もしたかも知れない。内心では軽蔑しながらも表面では讃美するものもあるし、内心は少し羨しくてもしくても」]表面ではケチをつけたがる者もいるだろう。いずれにしてもやや不思議な意外な決意だということが世間の婦人達や男達の常識観のようである。