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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

と云い、之に対してお鯉さんは「あなたは来なかった」というので、一向埒があかない。そこで、どうもお鯉さんが嘘をついているらしいと云うので、宣誓させてもう一遍テストすると、矢張小山検事総長に違いないというので、遂々検事局は、お鯉さんを偽証罪で告発し、市カ谷刑務所に収容して了ったわけである。

お鯉さんと岡本代議士との背後には黒幕があって、それが二人を操っているという、検事局の見込みらしい。それに関係して某代議士も召喚されるかも知れないという。なる程そういうことも大いにありそうなことだ。だがお鯉さんはかつては数多の高位顕官を手玉に取った桂公の愛妾だ。老いたりと雖もメッタな嘘はつくものではないだろう。嘘をついたとすれば多分相当大きな意味を持つ嘘だろう。ただお鯉さんは何と云っても高が待合の一女将に過ぎないのだから、この大きな意味のある嘘を、「本当」にまで組織するだけの条件が欠けていたばかりに、有態に嘘つきの罪名を被せられる浮目を見なければならなかった迄だろう。

検事局の取調べ中の事件に就いて、とや角云うことは無意味なことだし、又恐らく邪魔にもなるだろうから、深く立ち入って想像を廻らすことなどは慎まなければならないが、併し新聞を読み合わせて見てどうも判らない一点は、小山弁護士とお鯉さんとの対質で、なぜお鯉さんの方が嘘つき