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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
で小山弁護士の方が本音を吐いていると判ったかである。無論検事局ではその点ぬかりはない筈だが、新聞の上ではどうもその点がはっきりしない。で世間ではこんなようにこの関係を解釈出来やしないかと云っている者さえもいるのである。それは、小山弁護士もお鯉さんも別に嘘をついているのではなく、両方とも少しずつ思い誤りから出発しているので、特にお鯉さんは誰か小山検事総長の兄弟か何かで法相に非常に能く似た人が検事総長の名を騙ったのを、ウッカリ本物と思い込んで了ったのではないか、と。それならお鯉さんは少くとも嘘つきの悪名だけは雪げるわけである。(一九三四・四)
(一九三四・五)
失望したハチ公
一、失望したハチ公
雨の日も風の日も、死んだ主人にお伴をした習慣のままに、渋谷の駅頭に現われるハチ公である。彼は今では全くの宿なしで、大分老耗したルンペンだったが、外に行く処は別にないし、それに習慣というものは恐ろしいもので、周囲の事情がどう変ろうとも、渋谷駅の方に足が向く古い癖は決して直ろうとはしない。だが彼はこの牢として抜くべからざる奴隷的な陋習のおかげで、渋谷の駅頭ではすっかり縄張りが出来上り、顔なじみも段々殖えて、自分のルンペン振りもどうやら職業化して来たことを感じるようになったのである。