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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

処が四月の二十一日である。彼は自分が何とも知れぬ気味の悪い紅白の布を首から背中にかけられているのを発見して、スッカリ不愉快になって了った。自分の好まない衣類を着せられる程、自分を惨めに感じることはないので、彼はひどく不安そうにウロウロしないではいられなくなった。ひょっとすると自分は英雄になったのかも知れない、或いは神様に之から祭られるのかも知れない、それでこんな特別な着物を着なければならぬのかも知れないとも考えられたが、併し反対に、自分が今決死隊か何かで、又死刑囚か何かで、それとも又祭壇に捧げられる犠牲か何かで、皆んが責任を自分になすりつけるために、自分を飾り立てているのではないかしら、という心配もしないではいられなくなって来た。

大人や小供が身動きの出来ないように列車のホームに押しかけて来た。顔馴染の人もいたが、全く見知り合いのない弥次馬風の人間も多い。愈々自分がどうにかされるのだなと覚悟を決めざるを得なくなった。処が突然ある紳士が皆の前に押し分けて出て来て、何か挨拶を始めた。それから神主が何のためか知らないが祝詞を上げた。それが終ると渋谷の駅長さんが又何か喋った。