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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
丁度熱を下せば病気が治るというような考え方で、本末を顛倒していはしないかと思う。
前法主から僧籍を剥脱するということ自身が、法主が血統に立脚しているという証拠に矛盾するのだ。
大谷句仏氏は恐らく、その血の力によって、本能的にこういう推理を身につけるのであり、従って又本能的に、本願寺内局の自分に対する僧籍剥脱の矛盾を感じているものだから、それで一見理窟の通らない、ああした目茶な行動を取るのだろう。実際、大谷家の血統の神聖さにしか基いていない筈の本願寺の内局が、大谷家の血統にぞくする法主に就いて、その僧俗を是非するなどは、全く滑稽な矛盾だろうか。
こういう矛盾は今日の社会では容易にゴマ化されるように出来ていて、従って面倒なものだから世間ではあまり本気になって穿鑿しないのだが、世の中が段々末世になって、句仏上人のような俗物的な宗教離れのした宗教家業の子孫が産れて来ると、この変な制度に対する血液の不平が、色々の形で爆発するようになって来る。それで句仏氏は孫の得度式に、その血統の正義から云って、正に「前法主」として、出席を要求したり何かして、法燈に嵐を吹きつけることにもなるのである。