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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

所謂五・一五事件なるものは、単なる五・一五事件でないばかりではなく、五・一五事件+血盟団事件だけでもないらしい。処で之を「五・一五事件」として、或いは已むを得なければ「五・一五+血盟団事件」として、孤立させて発表するのには、当局に何かの都合があることだろう。この当局の都合も顧ずに、五・一五事件の全貌が発表されたとか何とか云って騒ぎ立てるのは、甚だ思いやりのなさすぎることではないか。

もし思いやりがなさすぎるのでなければ思いやりがありすぎることなのだ。

この事件が「発表」されたという事件に就いて、判らない点はまだまだある。新聞紙が伝える処によると、この「発表」の仕方に就いて、司法省と陸海軍両省との間に、初め、不思議にも、見解の対立があったそうである。司法省の意向としては、従来の「お役所型を破って」、相当具体的に諸データを指摘するというやり方で公表しようとしたのであるが、××××からは、之に対し或る修正案が提出されたそうである。

司法省のような公表の仕方をすると、予審が決定しただけでまだ本式には確定していない犯行事実をば、確実の事実であるかのような印象を与える仕方で発表する結果になりはしないか、それでは、外のことはとにかく、××××の威信を傷ける惧れがある。