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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

併し農村には云うまでもなく学校らしい学校も、大学もない、だから学制改革式の教育観と農村精神作興式の教育観との間にはまだなおギャップが横たわっている。政治家は云わば文部省と農林省との間のこの溝を埋めなくてはならぬ。この際、どっちをどっち側にまで移行させてアダプトさせればいいかは、一寸判らないわけだが、併し日本の兵士の内には農民が圧倒的に多数だという一つの事実が何よりも参考になるだろう。前内閣の枢軸をなしていた例の五相会議に於ける荒木陸相と後藤農相との関係を見れば、なぜ日本の兵隊がこの場合の参考になるかが判ると思うが、この関係から行くと、鳩山文部省と後藤農林省との比重関係は相当ハッキリしている。で鳩山式の学制改革的教育観の方が、後藤式農村精神作興的教育観に、その勢力関係から云ってアダプトしなくてはならない。

後藤式の農村精神作興的教育は、その村塾主義教育、道場主義教育に一等よく現われている。二月程前になるが、農林省では農村の中心人物を養成するために十二県に亘って「農民道場」(「百姓道」の道場)を設置することにし、後に之を十八県に亘ることに改めた。予算は十万円で之が半額補助の形式で各県に割り当てられるというのである。