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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

だが私は之を決して無意味だとか、まして悪いとか云うのではない。無論非常に立派なことなのだ。

だがこの婦人達の或る種の錯覚は是非とも訂正しておかなくては都合が悪い。農村の子女が安売されると云っても、無論この婦人達は女子供の売価が安いことに同情しているのではない。女を売買するということが、不道徳で、この不道徳な行為の対象となった女どもが可愛相だというのである。そして特に娼妓や芸妓や酌婦というような、この御婦人達にとっての金科玉条である生理的貞操の心理を攪拌するような連想を有つものを、この子女売買の名に値する代表的なものとして理解しているらしい。つまり、今日の東北の農村は子女の貞操観念を破壊する、だから東北の凶作は不道徳だ、という推理が中心な信条になっていると云っていいようだ。

だが人身売買は、又特に女子売買は、決して子女の生理的貞操の人身的売買ばかりではない。国際労働局次長のモーレット氏によれば、最近の日本製品の世界的進出は、日本のソーシャル・ダンピングに基くのではなくて、日本に於ける産業合理化と技術の優秀と、それら日本国民従って又日本労働者の特殊な生活の簡易にあるのだという。