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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

つまりそんなことはのりとかお題目であって、どうでもいいことだ。この政綱の類を神宣やお題目だと云って政府そのものを非難する者は、心ない次第で神宣でお題目である程度のことこそが、偶々正に必要なことだったに過ぎないのである。神話だって題目だって何かの利き目があればこそ世の中に存在するのである。

さて以上のような点を心得ておいて、八大政綱に一通り当って見ると、之は決してそんなに凡クラな声明ではない、特色があり過ぎる程特色がある。何等の新味がないなどと云うのは政党者流の浅見に過ぎない。抽象的であって何等の具体性もないというのも嘘で、世間がいやという程知っている具体的な内容を、単に抽象的な多少拙劣な文章で表現したに過ぎない。声明そのものというような外面的なものでこの政府の政策政綱をあげつらうことは、出来ない。ただ声明の内に含まれているらしい矛盾だけは少し困るので、声明が矛盾している時は心事にも何か矛盾がある時だが、併し自分の矛盾を気づかない体系も大いに存在し得るものなのだから、例の準戦時的体制という体系の首尾一貫には少しもさしさわりはないわけだ。準戦時的体制という首尾一貫した社会組織そのものの社会的な無理が、偶々まわり廻って、政綱のそこここの矛盾となって現われはしないかどうかは、別としてだ。