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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

真中の二つは具体的に判るが、労働力の維持増進というのは何か一寸は判りかねよう。労働力は今日の社会機構では労働者のものではなくて資本家の所有である。少くとも役に立つ労働力(ゴロゴロ遊んでいる労働力でない限り)はそうだ。その維持増進が国民生活の安定になるというのは、少し変である。尤も労働力の維持というのは何か労働者の健康のことかも知れぬ、なる程健康ならば増進という言葉も常識的に判る。だがそうすると日本の労働者は不健康であるために失業しているということになる。社会の矛盾を生理的に解決する次第だが、この点最初の「国民体位の向上」を考え合わせて見ると、納得が行くものがあるだろう。ここで政府の目指す処は軍人たるべき壮丁の体位の下向を防ぐということだ。つまり体格優秀なる軍人が出来れば国民生活は安定を期し得るというわけになる。労働力というのも資本主義的に見た限りの壮丁(労働者)の体位のことだっただろう。労働者は今や、資本主義的壮丁として生活の安定(?)を期せられる。之は労働の軍事化の観念であり、夫が労働組合脱退の奨励ともなれば、やがて国家的報仕労働というシステ無にも発展出来る素物である。