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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
残された方法は歎願の形式だけだというのである。
請願はいけないが歎願はいいということになるらしいが、請願と歎願と法律上どう違うかは問題外としても、二つのものが実際上どれだけ区別されるものであるかを吾々は知らない。歎願でも例えば判事の論告の内に取り上げられれば実際上は極めて大きな効果があるので請願でなかったことを悲しむ理由はどこにもないだろう。最近そうした処置を合法化した判例もあるとかという話しだ。
そこで歎願の形式を持った減刑要請は、二十四日の陸軍側公判廷に提出されたものを見るとすでに七万人の署名の下に行われている。その後更に東京付近だけで一万六千人の署名がある。減刑歎願書一万人署名が完了した際などには、明治神宮や靖国神社へ行って祝詞を奏したり被告の武運長久の祈願をこめたりしている。但し対手は神様なのだから之は被告賞恤や減刑請願になる心配はないので疑いもなく歎願だから心配しなくてもいい。
関西の軍需品製造の某資本家は、陸軍被告家族一同に対する慰問金として、陸相あて金壱百円也を寄贈した処、当局から早速家族にその旨通知すると、家族達は事件当日首相官邸で殺された某警官の遺族に之を譲ったそうである。