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かみはよわいものをたすけた
神は弱いものを助けた
小川 未明
「読売新聞」1920(大正9)年6月3~4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,617 字 · 4 页
一
一
あるところに、きわめて仲の悪い百姓がありました。
この仲の悪い甲と乙とは、なんとかして甲は乙を、乙は甲をうんとひどいめにあわしてやりたいと思っていました。けれど、なかなかそんなような機会はこなかったのであります。
ある年の夏の日のことでありました。幾日も幾日も、天気ばかりがつづいて、雨というものがすこしも降りませんでした。そして、諸所方々の水が涸れてしまって、井戸の水までが日に日に少なくなるのでありました。
甲の家の井戸は深くて、容易に水の尽きるようなことはありませんでしたけれど、乙の家の井戸はわりあいに浅くて、もう水が尽きるのに間もありませんでした。
甲は、そのことを知るとたいへんに喜びました。乙の野郎め、水がなくなってしまったら、どうするだろう。水を飲まずに生きていられまい。そうすれば、きっとこの村からどこかへ逃げてゆくか、俺のところへ頭を下げて、お願いにくるにちがいないと思いました。
乙は、だんだん井戸の水が少なくなるので、気が気でありませんでした。もしこの水がなくなってしまったら、どうしようと思いました。しかたがないから、どこかの清水のわき出るところを探さなければならないと思って、乙は、その日から毎日、近所の山のふもとの心あたりを探ねて歩きました。