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かみだな
神棚
豊島 与志雄
「新潮」1923(大正12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页
馬鹿馬鹿しいと思う心の下から、自暴ぎみの反抗心が湧いてきた。何に対してだかは分らないが、なあに俺だって……という気持になった。そしてじっと考え込んだ。
俺はその時くらい孤独な感じに打たれたことはない。何もかも遠くなって、世界の真中にただ一人投り出された心地だった。弁士が饒舌り立てている、何百人もの人がぎっしりつまっている、表には満員の電車が通っている、慌しい大勢の足音がしている、自動車も走っている……然しそういうものは、みんなこの俺には関係のない他の世界だ。俺はただ一人きりだ。この身体とこの生命とだけが俺の世界だ!……そう思ってると、非常に自由な晴々とした気持になっていった。俺は何でも出来そうだった。
そうだ、何でも! 無一文で正月を迎えることも……金がいるというなら、盗み取ってくることも……笹木に内通していくらか搾り取ってやることも……場合によっては、妻や子供を捨てて一人身になることも……あの神棚を打ち壊してやることも……何だって出来ないとは限らない。みんな寄ってたかって俺をどうしようというのだ? 打ちかかって来るなら来てみろ、俺は笑ってやらあ!