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かみだな

神棚

豊島 与志雄

「新潮」1923(大正12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页

青空文庫

けれどまだ、ぎりぎりの瀬戸際までいったわけではない。

「じゃあ、その瀬戸際にいってどうするつもりだよ?」

それが、お久の最後の鉄槌だった。まさか俺だって、其処までいったのにいい加減なことも云えないし、打挫がれて黙り込むより外はなかった。けれど……けれど……やはりまだ瀬戸際まで押しつまったわけではない。

「まあ、明後日までのうちにはどうにかするよ。」

何だか俺は飯もまずくなってしまった。腹が少しばかり出来てきたからではない。変に気が滅入ってきたからだった。なぜ俺はこう貧乏なんだろう! ……電燈の光は妙に薄暗いし、家の中は汚く煤けている。俺は馴れてるから分らないが、初めてはいって来る者があったら岐度、貧乏くさい臭いがしてると思うに違いない。

俺が黙り込むと、お久まで変に黙り込んでしまったし、子供達までがもそもそと、味なさそうな飯の食い方になっていた。こうなっちゃ助からない、と俺は思い初めたが、それが、威勢のいい格子の音で助かった。

やって来たのは池部だった。平素からてきぱきした男だが、その晩は何か昂奮してるらしく、殊に勢いづいていた。

「やあ、飯の最中か。