轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かぐらざか

神楽坂

矢田 津世子

「人民文庫」1936(昭和11)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,611 字 · 40 页

青空文庫

女親の手ひとつで育てあげられたその恩を、あの娘は全で古元結か何んぞのように捨てている。――おっ母さんにはお初の今の言い草が恨めしくてならない。赤い眼をあげて梯子段を眺めては、また袖口をあてて泣いている。

亡くなった内儀さんの百ヶ日がきた。

朝、爺さんは袋町へ寄って墓詣りにお初をもつれ出した。郷里にある本家の墓の世話になるのを嫌って、爺さんはこんど雑司ヶ谷へ新らしく墓をたてたのだ。雪もよいの寒む風が頬に痛いようである。森閑とした墓地径を二人は黙って歩いている。爺さんは時折り咳をする。マスクを口の方へ下して洟をかむ。ラッコの衿を立てて、白足袋の足を小刻みにせかせかと歩いている。お初は藤紫のショールの端で軽く鼻のあたりを覆うて、小菊の束を抱えて爺さんに跟いていく。枯枝に停っていた一羽の雀が白いふんをたれながら高く右手の卒塔婆の上へ飛んだ。

墓の前へ出た。爺さんは二重廻しと帽子をお初へ持たせておいて紋付の羽織を背中の方まで端しょって墓の前へしゃがんだ。この前供えておいたお花が霜枯れして花活けの竹筒に凍てついてしまって仲々とれない。ようやくのことで爺さんはお初の持ってきた小菊を活け終わると、マスクを鼻の方へあげてお念仏を唱えながら永い間手を合せている。