轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かぐらざか
神楽坂
矢田 津世子
「人民文庫」1936(昭和11)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,611 字 · 40 页
「また、おねだりかい」
こう口先きだけは窘めるように云うても眼は笑ってお初のぼってりとして胸もとの汗ばんだ膚をこっそりと愉しんでいる。
「ねえ、父うさん、いいでしょう。お宝頂かせてよ」
お初は鬢へ櫛をいれながら鏡の中の爺さんをのぞきこんでいる。
「何んだ、銭かい? まあ、帰りしなでもいいやな」
「いいえ、父うさんは忘れっぽいから今すぐでなければ厭よ」
髪を直し了ったお初はちり紙で櫛を拭きながら爺さんをみてこう急きたてた。
お初がこんなにせっつく金をせびるには、子供の頃おっ母さんに欲しいものをおねだりした時の癖が出てきているのである。
その頃、おっ母さんは向島の待合大むらというのに仲居をつとめていてお初を花川戸の親類の家にあずけておいた。観音様へ月詣りをしていたので、そのたびに花川戸へ寄ってお初をつれ出してはお詣りをすませて仲見世をぶらつくのが慣しになっている。仲見世にはお初の欲しいものが沢山ある。絵草紙屋の前にしゃがんで動かないこともある。大正琴にきき惚れている人だかりへまぎれこんで、おっ母さんを見失ったこともある。「何んか買うてよう」とねだれば、決り文句のように「また、あとでねえ」