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しんけい
神経
織田 作之助
「文明 春季号」1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,754 字 · 28 页
「皆で金出し合うて、地蔵さんを祀ったげよか」
「そやそや、それがええ。祀ったげぜ、祀ったげぜ」
そんな話をしている隣のテーブルでは、ピエルボイズの男優たちが、弥生座の楽屋から見える連込宿の噂をしていた。連込宿の二階の窓にはカーテンが掛っているが、彼等は楽屋の窓から突き出した長い竿の先で、そっとそのカーテンをあけると内部の容子が手にとるように見えるというのであった。彼等は舞台の合間にその楽屋に上って来ては、宿の二階を覗く。何にも知らぬ若いレヴュガールを無理矢理その楽屋の窓へ連れて来て、見せると、泣きだす娘がある――その時の噂をしていた。
「チャー坊はまだ子供だからな」
「そうかな。俺アもうチャー坊は一切合財知ってると思ってたんだが……」
「しかし、まだ十七だぜ」
「十七っていったって、タカ助の奴なんざア、あら、今夜はシケねなんて、仰有ってやがらア。きゃつめ、あの二階を見るのがヤミつきになりやがって、太えアマだ」
「太えアマは昨日の娘だ。ありゃまだ二十前だぜ」
「二十前でも男をくわえ込むさ」
「ところが、一糸もまとわぬというんだから太えアマだ」
「淫売かも知れねえ」
「莫迦、淫売がそんな自堕落な、はしたないことをするもんか。