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しんけい

神経

織田 作之助

「文明 春季号」1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,754 字 · 28 页

青空文庫

所詮は子供相手のチャチな、毒にも薬にもならぬみすぼらしい見世物に過ぎなかったのではあるまいか。あんなものを豪華だといって誇っていた戦前の日本も、結局はけちくさい貧弱な国だったのかと、改めて情けなかった。豪華といってみたところで、宝塚のレヴュなぞたかだか阪急沿線のプチブル趣味の豪華さに過ぎない。同じ貧弱なら、新宿のムーラン・ルージュや浅草のオペラ館や大阪の千日前のピエルボイズ(これも浅草から流れて来たものだが)の方が、庶民的で取り済ましてないだけまだしも感じがよい。宝塚や松竹の少女歌劇は男の俳優は一人もいないが、思慮分別のある大の男が一生を託する仕事ではあるまい。レヴュが好きで、文芸部の仕事をしたり、作曲したり装置したりしている人も少くないが、本当に男子一生の仕事と思ってやっているのだろうか、疑わしく思う。「おお!」という間投詞を入れなければ喋れないようなレヴュ俳優の科白廻しを聴いていると、たしかにこれは男子の仕事ではないという気がするのである。

科白廻しといえば、私は七つの歳にはじめて歌舞伎を見た時、何故あんな奇妙な喋り方をするのだろうかと、奇異な感がしたことを覚えている。