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しんけい
神経
織田 作之助
「文明 春季号」1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,754 字 · 28 页
が宮本武蔵と同じ調子に聴える。放送劇の若い娘役は、いつもやけに快活で、靴下に穴のあいたような声を出し、色気があるのかないのか、いや色気などといういい言葉が勿体ないくらいだ。政府の大官はいかなる場合にも屏風と植木鉢を聯想させるような声を出す。座談会の出席者は、討論の相手とマイクとどちらの方へ話しかけていいのかうろうろ迷っているし、共産党員は威勢ばかりで懐疑のない声だ。放送演説の名人といわれていた故永田青嵐ですら、いつ聴いても「私は砕けて喋っていますよ」といった同じ調子が見え透いてうんざりさせられるし、この人を真似た某大官の演説は、砕けすぎて気を許したのか、お国言葉の東北弁まるだしだ。
バイオリンの天才少女の辻久子は、八つか九つの時、豆腐屋のラッパの音を聴いただけで、もう耳を押えて、ああ耳が痛い耳が痛いと泣き叫んだということである。私は辻久子ほど音というものに敏感ではないが、声の型にはいやになるくらい敏感なのか、ラジオを聴いていて、十年一日の如き紋切型に触れると、ああ耳が痛い耳が痛いと耳を押えたくなることが屡※(二の字点、1-2-22)である。
ことに戦争中はそれがひどかった。