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しんわとちきゅうぶつりがく

神話と地球物理学

寺田 寅彦

「文学」1933(昭和8)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,669 字 · 6 页

青空文庫

「またその身に蘿また檜榲生い」というのは熔岩流の表面の峨々たる起伏の形容とも見られなくはない。「その長さ谿八谷峡八尾をわたりて」は、そのままにして解釈はいらない。「その腹をみれば、ことごとに常に血爛れたりとまおす」は、やはり側面の裂罅からうかがわれる内部の灼熱状態を示唆的にそう言ったものと考えられなくはない。「八つの門」のそれぞれに「酒船を置きて」とあるのは、現在でも各地方の沢の下端によくあるような貯水池を連想させる。熔岩流がそれを目がけて沢に沿うておりて来るのは、あたかも大蛇が酒甕をねらって来るようにも見られるであろう。

八十神が大穴牟遅の神を欺いて、赤猪だと言ってまっかに焼けた大石を山腹に転落させる話も、やはり火山から噴出された灼熱した大石塊が急斜面を転落する光景を連想させる。

大国主神が海岸に立って憂慮しておられたときに「海を光して依り来る神あり」とあるのは、あるいは電光、あるいはまたノクチルカのような夜光虫を連想させるが、また一方では、きわめてまれに日本海沿岸でも見られる北光の現象をも暗示する。

出雲風土記には、神様が陸地の一片を綱でもそろもそろと引き寄せる話がある。