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こうせんぜんじのことども

禅堂生活

鈴木 大拙

鈴木大拙『禅堂生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:洪川禅師のことども、釈宗演師を語る、僧堂教育論、楞迦窟老大師の一年忌に当りて、鹿山庵居。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,634 字 · 57 页

青空文庫

今一、一その時の記憶を呼び起すわけに行かぬが、日清戦争のときに死んだものも二、三はあったと思う。神尾将軍などもおった、大尉だった筈である。例の二畳の間へ引っ込んで、だまって坐禅しておった。何だか怖い人であると思うた。それから今朝鮮へ行っておる秋山博士も、六畳の室で坐っておった。布哇から帰って来たときであったか、それは今覚えておらぬ。何でも三橋から饅頭を沢山買って来て、わしらに食わした。その饅頭が随分多かったので今尚お記憶しておる。貧乏書生に似つかわしい記憶である。

それから熊本の岐部別峯居士と云うのがあって、少尉か中尉かであったが、中々世話してくれた。よく饒舌る人で、また面白く話する人であった。撃剣も上手と見えて、その方の事も話しておった。今出世しておれば少なくとも少将か位にはなっておると思う。世間には余り名が出ないからには、どこかに燻ぶっておるのかも知れぬ。居士号もあって見性も済んでおるもの故、わしらは種々と、禅のこと公案のことを尋ねたものである。

わしがこの庵へ始めて来た頃は、まだ洪川老師が在世であった。あの大きな体をもって、方丈の方から、わしらのおる処の庭先を通って、トンネルを抜けて、隠寮へ帰らるるのを、よく覚えておる。