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わたくしたちのけんせつ

私たちの建設

宮本 百合子

「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页

青空文庫

けれども、現実に、預金が干上ってしまった赤字破局だからこそ、モラトリアムはしかれたのではなかっただろうか。一人百円ずつ引出せる、といわれても、引出す金はもう大体において尽きている。

こういう疑問にみたされながら、私共は従順に、十円札に小さい皮肉な膏薬のように貼紙をつけ、三月三日という暦をはぎとった。

旧券封鎖で、物価はどうなるかと、目をみはって来る日を迎えた。配給になった米は、今度から約三倍の値上りをした。町会費も、今月から三倍になった。省線に乗ったらば、二十銭区間が四十銭になり、三円の回数券は、九円である。闇市場では、ミカンや汁粉は、とぶようにうれて、やすいものは売れないと、新聞は報じている。やすいものといっても、十五円のものが十円に下った程度であるとも報じられている。

水道十二倍、ガス六倍の値上げが予告されている。私たちの眼は、大きく大きくと見開かれてゆく。生活は、どうなるのだろうか。今日そう思わない人民大衆は一人もあるまいと信じる。全く私たちの生活は、どうなるのだろう。

三月四日の新聞は「月五百円『当局の家計簿』標準は都会五人家族」という記事を出した。