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わたくしたちのけんせつ

私たちの建設

宮本 百合子

「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页

青空文庫

モラトリアムをしくしか、政府のうつべき手はなかったのである。

けれども、モラトリアムの噂がひろがり、それが実現したニュースをきいたとき、私たちのこころには、数々の疑問が生じた。

モラトリアムをしかなければならなくなる迄に、政府は、どんなことをして来たか。疑問というのはこのことなのである。

さきにふれたように、政府はインフレーション防止という名目で、戦時利得税、財産税を公表したりした。しかし実行に着手しないで、時を過して来た。この間に、財閥、金もちたちは、十分脱税の方法と、財産隠匿をする時間を与えられた。事実、この税案が公表されてから後、それらの人々の濫費のために、目に見えて物価は高くなり、インフレーションは増大したのであった。

いざモラトリアムが公布されるという前日、殆どすべての銀行で、政府要路の人物、財閥たちは、手持ちの厖大な金額を、封鎖洩れとされていた五円紙幣に代えた。モラトリアムが公布されたとき一般の市民は忽ち小額紙幣饑饉で大困難をした。モラトリアム第一日に、各新聞の投書欄は、政治的醜聞として、その公表前に、一部の人々によって小額紙幣が独占された事実を指摘したのであった。