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わたしのあったゴーリキイ

私の会ったゴーリキイ

宮本 百合子

「文学案内」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,457 字 · 11 页

青空文庫

写真でなじみのあるあの髭、薄いねずみいろのフランネルのシャツ、その上に楽に羽織られているやっぱり灰色のような単純な上衣。握手した手は温かく大きく、そしていかにもさっぱりしている。私は、これは日向の立派な樅の木だ、とそういう感じに打たれた。

私たちは簡単にソヴェトの文学のこと、日本の文学のことなどを話し、私はピリニャークが日本にきて後かいた「日本印象記」のことについて短い感想を述べた。つまりピリニャークの文章は気取っていて面白いかも知れないが、日本という国の実際はあれには描かれていないし、女である私からみればピリニャークが芸妓というものを他のヨーロッパの作家でもそう思うであろうように、大変幻想的な美しさにみちたものとしてかいている点は、ソヴェトの作家として不満を感じるといった。

何しろそのころの私のロシア語でそれをいうのであるからゴーリキイとしても要点をつかむのに困っただろうが、彼は持ち前の注意ぶかさ、老年になってもちっとも衰えることのない集注的な眼つきで私の話をきき、フムフムとうなずき、私があなたはピリニャークをどう思うかと訊いた時、彼は全く素朴な、しかもきわめて痛切な表情でもって、たった二た言、