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わたしのおもいで

私の思い出

柳原 白蓮

「ことたま」日本出版広告社、1954(昭和29)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,796 字 · 8 页

青空文庫

ところが夫になった人は私に決してよぶんなお金を自由にさせません。毎月定まったお小遣いで、かえって私の友人の大学教授夫人の方がよっぽど豊かで自分勝手に着物や帯を買ってるのを見て羨ましかったのでした。

その頃の着物や帯は決して自分で好きなものを買うのではなく、夫が見立て私にあてがわれるものだけなのです。何かで毎月の定まり以上に入用な時は夫からお金を借りることはありました。またよく貸してもくれました、がしかしこれは借りたものですから必ず後で返したのです。夫はあたりまえの顔をしてうけとりました。

家庭の中に親の異う養子が何人もいたり、夫はこれらに対しても愛情を持たなかったので、情愛というものをまったく忘れた冷たい家庭でした。

追々私のお小使いを上げてもらうためには夫の妾が私をカバって夫に頼んでくれていくらか都合のよいこともありましたのも、考えてみれば妙ちきりんなものでした。だから始終嘘をついていなければ日が送れないのです。苦痛はそこにありました。

終いにはほとほと空おそろしくさえなりました。心も魂も汚れはててゆくばかりでした。そこで人間の運命というものはたしかにあります。