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わたくしのかきたいじょせい

私の書きたい女性

宮本 百合子

「私の書きたい女性」NHKラジオ、1949(昭和24)年7月18日放送

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,062 字 · 3 页

青空文庫

風俗小説、女に映り女によって表現されるさまざまの世相をそれなり面白く描写してゆきます。けれども、わたし達がこんにち生きる心の底には、色さまざまのネオンがいろんな角度から空に反射しているような女の世相を見るだけでは満足しない何かの思いが貫いているのではないでしょうか。

いろんな思いをし、いろんな目にあって生きてゆく。人間の一生はただそれっきりのものなのだろうか。この疑いは、とくに、いまの日本の女の心にはげしく息づいています。女をしばる封建の道徳から自分をときはなして、新鮮で豊かな、ヒューマニズムを実感して生きてみたい。理屈の判断から社会悪に抵抗しているだけでなく、一歩その前へ出て、よりましな人生をたたかっているという、人生創造のよろこびと確信とを求めようとしている女性の精神こそ、現代のテーマだと思います。情感そのものの内容が著しく社会的に、また理性的になって来ていて、しらずしらずのうちに、思想を感情そのものとして生きてゆくような女性が増えて来ています。これは、日本の社会と文学との上にひらかれはじめた大きい可能性の一つではないでしょうか。

新しいイヴは、男の肋骨の間からではなく、社会と女性の歴史そのもののなかから、さまざまな場面に生れつつあります。