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わたしのうまれたいえ
私の生まれた家
中谷 宇吉郎
「朗」1961(昭和36)年4月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,385 字 · 3 页
しかし反物などを買う客は、畳敷の上にあがり込む。そしていろいろな反物を、畳の上に拡げて、品定めに、一時間も二時間も坐り込んでいた。三十畳敷近くもあったと思うが、二、三人のそういう客に坐り込まれると、店いっぱいに、反物が並べられて、その間をぬって歩くのが、たいへんだった。反物を踏んで叱られるのは、毎日のことであった。
父はハイカラ好きであって、呉服部の一部にショー・ウインドーをつくった。幅一間ちょっと、深さ四尺くらいの小さいウインドーであったが、出来たときは、非常に珍しがられて、付近の村の人が見に来たくらいであった。
この頃でも、北海道の奥地へ行くと、こういう店屋を見ることがある。北海道の村というのは、非常に広く、中には、神奈川県よりも広い村もある。そういう村には、一場所、中心地があって、それを市街地といっている。この市街地の中に、都会のデパートの役目をしている店屋が、一つくらいは必ずある。そういう店を見ると、私はよく子供の頃を思い出す。
住居は、裏にあって、板敷の台所で、つながっていた。この台所は、食堂も兼ねていて、広さは、二十畳敷くらいもあったであろう。