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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页
「無態、理不尽。すべていわれなくても心得ておる。だが藤夜叉、よっく胸に手をあてて考えてみろ。そなたも悪い」
「な、なぜでございまする?」
「いかなる女も、ままにならぬ女はなかった。伊吹ノ城でも、この都にいてさえもだ。ところが、自分の召抱えている田楽女の……それも小娘ずれのそなたにだけは、したたか、道誉の沽券をきずつけられた。忘れようにも、ともすれば、忘れられぬ」
「おゆるし下さいませ。もう遠い前のことなどは」
「むむ、いつまで、こだわッていたくもない。けれどおれと高氏とは、なぜか女のことでは、ふしぎに妙な宿敵の巡り合せになってくる。それには男の意地も手伝う。……いや、そんなことは聞かすにおよばん。おれはどうしても、いちどはそなたを、ぞんぶんにする。せずにおかぬ」
「…………」
「ややもすれば、この業が煮えたぎるように、そなたの体のうちへも、道誉という男を烙きつけねば、一生、妄執は晴れやるまい。藤夜叉、これほど男からいわれたら、もう眼をふさいでもよいであろうが」
「……な、なにを、仰っしゃいます。いくらむかしのご領主とはいえ」
「ばかな」
するどく直って。
「領主。