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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页

青空文庫

「えっ?」

「かの朝臣とは、以前、ふかく心をかたりあっていたのです。都でも伊吹ノ城内でも」

「まったくですか」

「あなたが、ご存知ないとはおかしい。さもなくて、何で道誉が獄のみかどへ、あんな奉仕を、よそながらでもいたしましょうか。――幕府の前に、一身を賭けてまで」

具行はうなずいた。眼の前の道誉が、百倍もの、たのもしい一味の同志に見えていたのである。

彼は、眼をとじながら、連判の簿を読むように、全国にわたる隠れた宮方の武士の名を記憶のままに挙げて行った。それを、道誉はじっと、聞きすまして、いちいち胸に刻んでいた。

意外な名が、次々に、具行の口から出た。

道誉でさえ、日頃、よもやとしていた武族までが、宮方連判の一人であると――その連判はないが――いま、明言されて出たのだった。

「……して、足利の名は、如何ですか。よもや加わっては、いないでしょうな」

「下野の足利か」

「そうです。笠置攻めにも、上っていた又太郎高氏です。しかし彼は、正面の攻撃にはむかわず、伊賀方面をまごまごして、そのくせ、いちばん遅くまで、畿内に兵をとどめていたなど、とかく不審な行動をとっていた者ですが」