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あきのしゅぜんじ

秋の修善寺

岡本 綺堂

在线阅读岡本 綺堂《秋の修善寺(あきのしゅぜんじ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,167 字 · 11 页

青空文庫

と口々にいう。なにさま外は晴れて水は澄んでいる。硝子戸越しに水中の魚の遊ぶのが鮮かにみえた。

朝飯をすました後、例の範頼の墓に参詣した。墓は宿から西北へ五、六町、小山というところにある。稲田や芋畑のあいだを縫いながら、雨後のぬかるみを右へ幾曲りして登ってゆくと、その間には紅い彼岸花がおびただしく咲いていた。墓は思うにもまして哀れなものであった。片手でも押し倒せそうな小さい仮家で、柊や柘植などの下枝に掩われながら、南向きに寂しく立っていた。秋の虫は墓にのぼって頻りに鳴いていた。

この時、この場合、何人も恍として鎌倉時代の人となるであろう。これを雨月物語式に綴れば、範頼の亡霊がここへ現れて、「汝、見よ。源氏の運も久しからじ」などと、恐ろしい呪いの声を放つところであろう。思いなしか、晴れた朝がまた陰って来た。

拝し終って墓畔の茶店に休むと、おかみさんは大いに修善寺の繁昌を説き誇った。あながちに笑うべきでない。人情として土地自慢は無理もないことである。とかくするあいだに空は再び晴れた。きのうまではフランネルに袷羽織を着るほどであったが、晴れると俄にまた暑くなる。