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あきげ
秋毛
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,954 字 · 4 页
病みあがりの髪は妙にねばりが強くなって、何ぞと云ってはすぐこんぐらかる。
昨日、気分が悪くてとかさなかったので今日は泣く様な思いをする。
櫛の歯が引っかかる処を少し力を入れて引くとゾロゾロゾロゾロと細い髪が抜けて来る。
三度目位までは櫛一杯に抜毛がついて来る。
袖屏風の陰で抜毛のついた櫛を握ってヨロヨロと立ちあがる抜け上った「お岩」の凄い顔を思い出す。
只さえ秋毛は抜ける上に、夏中の病気の名残と又今度の名残で倍も倍も抜けて仕舞う。
いくら、ぞんざいにあつかって居るからってやっぱり惜しい気がする。
惜しいと思う気持が段々妙に淋しい心になって来る。
細かい「ふけ」が浮いた抜毛のかたまりが古新聞の上にころがって、時々吹く風に一二本の毛が上の方へ踊り上ったり靡いたりして居る様子はこの上なくわびしい。
此頃は只クルクルとまるめて真黒なピンでとめて居るばかりだ。
結ったって仕様のない様な気がする。
若い年頃の人が髪をおろす時の気持が思いやられる。
ピッタリと頭の地ついた少ない髪を小さくまるめた青い顔の女が、体ばっかり着ぶくれて黄色な日差しの中でマジマジと物を見つめて居る様子を考えて見ると我ながらうんざりする。