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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
いきなり女が口をはさんだ。斬り落すような調子だった。
風が雨戸を敲いた。
男は分厚い唇にたまった泡を、素早く手の甲で拭きとった。少しよだれが落ちた。
「なにが迷信や。迷信や思う方がどだい無智や。ちゃんと実例が証明してるやないか」
そして私の方に向って、
「なあ、そうでっしゃろ。違いまっか。どない思いはります?」
気がつくと、前歯が一枚抜けているせいか、早口になると彼の言葉はひどく湿り気を帯びた。
「…………」
私は言うべきことがなかった。すると、もう男はまるで喧嘩腰になった。
「あんたも迷信や思いはりまっか、そら、そうでっしゃろ。なんせ、あんたは学がおまっさかいな。しかし、僕かて石油がなんぜ肺にきくかちゅうことの科学的根拠ぐらいは知ってまっせ。と、いうのは外やおまへん。ろくろ首いうもんおまっしゃろ。あの、ろくろ首はでんな、なにもお化けでもなんでもあらへんのでっせ。だいたい、このろくろ首いうもんは、苦界に沈められている女から始まったことで、なんせ昔は雇主が強欲で、ろくろく女子に物を食べさしよれへん。虐待しよった。そこで女子は栄養がとれんで困る。そこへもって来て、勤めがえらい。