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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
露骨にいやな顔をしてみせた。
女はすかされたように、立ち止まって暫らく空を見ていたが、やがてまた歩きだした。
「貴方のような鋭い方は、あの人の欠点くらいすぐ見抜ける筈でっけど……」
どこを以って鋭いというのかと、あきれていると、女は続けて、さまざま男の欠点をあげた。
「……教養なんか、ちょっともあれしませんの。これが私の夫ですというて、ひとに紹介も出来しませんわ。字ひとつ書かしても、そらもう情けないくらいですわ。ちょっとも知性が感じられしませんの。ほんまに、男の方て、筆蹟をみたらいっぺんにその人がわかりますのねえ」
私はむかむかッとして来た、筆蹟くらいで、人間の値打ちがわかってたまるものか、近頃の女はなぜこんな風に、なにかと言えば教養だとか、筆蹟だとか、知性だとか、月並みな符号を使って人を批評したがるのかと、うんざりした。
「奥さんは字がお上手なんですね」
しかし、その皮肉が通じたかどうか、顔色も声の調子も変えなかった。じっと前方を見凝めたまま相変らず固い口調で、
「いいえ、上手と違いますわ。この頃は気持が乱れていますのんか、お手が下ったて、お習字の先生に叱られてばっかりしてますんです。