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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
「貴方は誰ですの?」
「高瀬です」
つい言った。
「まあ」
さすがに暫らくあきれていたようだったが、やがて、
「高瀬はまあええとして、あの人はまた、○○○が好きや言うんです。私、あんな下品な女優大きらいです。ほんまに、あの人みたいな教養のない人知りませんわ」
私はその「教養」という言葉に辟易した。うじゃうじゃと、虫が背中を這うようだった。
「ほんまに私は不幸な女やと思いますわ」
朝の陽が蒼黝い女の皮膚に映えて、鼻の両脇の脂肪を温めていた。
ちらとそれを見た途端、なぜだか私はむしろ女があわれに思えた。かりに女が不幸だとしても、それはいわゆる男の教養だけの問題ではあるまいと思った。
「何べん解消しようと思ったかも分れしまへん」
解消という言葉が妙にどぎつく聴こえた。
「それを言いだすと、あの人はすぐ泣きだしてしもて、私の機嫌とるのんですわ。私がヒステリー起こした時は、ご飯かて、たいてくれます。洗濯かて、せえ言うたら、してくれます。ほんまによう機嫌とります。けど、あんまり機嫌とられると、いやですねん。なんやこう、むく犬の尾が顔にあたったみたいで、気色がわるうてわるうてかないませんのですわ。