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あきくさのみ

秋草の顆

佐左木 俊郎

「今日の文学」1931(昭和6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,856 字 · 8 页

青空文庫

というようなことを口の中で言っただけで、別段それに就いて説明などはしなかったものだから、妻は「全くの唖というわけで無いんですもの、どうして食べるかぐらい、ちょっと一言教えて下さるといいのに……」と言うのであった。

*

従弟の峻もまた、甚だしい沈黙家で、最初の「ではどうぞ!」という挨拶さえ言うことが出来なかったほどだ。そして朝になると、誰へ挨拶するということもなく、ごそごそと学校へ出かけて行って、夕方になるといつの間にか自分の部屋へ帰っているという風であった。私とは、何時間という間を対きあっていても、互いに言葉をかけあわないのはもちろんであったが、私の妻が話しかけることがあると彼は徹頭徹尾「いいえ」と「はい」とだけで押し通すのであった。妻が「峻さんのシャツは真っ黒じゃないの? お脱ぎなさい」と言っても、彼は「代わりのシャツが無いんです」とは言うことが出来ないのだ。顔を赤くして学生服のボタンをはずしたりかけたりしているだけなのだ。そして妻が、私の古いシャツを出してやると、初めて裸になるという始末であった。妻はしばしば「あなた方は、従兄弟同士なら、ときどきは何か言うものよ。