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しゅうふうふき

秋風不帰

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,593 字 · 28 页

青空文庫

――どうにかしなくてはならぬ。

と洩らしたことがあった。

原因は案外そんなところにあるのではないか、夏雄はそう思った、……ただ乱心したというだけで、なにも仔細が分らない、刺し止めた者の名も秘密になっているというのは、それらが公表されると国老に不利な事実が表われるからではないのか。

「七沢、貴公に頼みがある」

「…………」

「明日でも明後日でもよい、銀之丞を拙者の許まで連れ出してくれ」

「それで、……どうする」

「銀之丞は知っている筈だ、いや、事の始末を知らなくとも父を刺し止めた近習番が誰だかということは知っている筈だ。拙者はそれを知りたい、どうしても知らずには置かぬ」

「いま貴公はどこにいる」

「杖折峠の裏に谷があるだろう、大篠山の裾伝いに行ったところだ、あの岩の奥に藪に囲まれた荒屋がある。そこにいる」

「やってみよう」

吉郎兵衛は暫く考えてこう云った。

「ただ昨夕の騒ぎで貴公が帰ったことを知っているだろうから、余り急いでは気付かれると思う、二三日余猶を置いて貰いたいが」

「迷惑をかけて済まぬが、……頼む」

夏雄は膝に手を揃えて低頭した。

谷間の廃屋の位置など、なおくわしく説明した後、茶をと云われるのを辞退しながら立ち上ったが、大剣を腰に差そうとしてふと、