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しゅうふうふき

秋風不帰

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1939(昭和14)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,593 字 · 28 页

青空文庫

「助勢の者は引受けた、存分にやれ狩谷」

と、叫んだ、

町子の兄、若林善之助である。

夏雄はにっと微笑しながら、狂気のようにはね起きる吉郎兵衛を、切尖で軒から外へと追い出した。

「抜け、抜け吉郎兵衛」

「…………」

「卑怯に後から騙し討ちをかける手はあっても、武士らしく刀を抜くことは出来ないのか、恥を知れ」

「……やっ!」

わっというような叫びと共に、吉郎兵衛は絶体絶命の刀を抜いた。

しかし刀身が鞘を離れるより早く、夏雄の剣は彼の真向を割りつけていた。……降りしきる雨のなかを、吉郎兵衛はつんのめるようなかたちに、だあっと倒れた。

「……みごと」

声を掛けながら、善之助が出て来た。

「加勢の者は?」

「貴公のみごとな先で、虚を衝かれたとみえて、みんな退散した。しかし恐らくすぐ手配りをするだろう、早く止めを……」

「うん」

夏雄は二人に止めを刺し、髪を切り取った。

「町に会ったか」

「……会った、……遺骸は観音堂にある」

「褒めてやってくれ」

「うん」

夏雄は善之助の手を力限り握り緊めた。

「悲しいめぐりあわせだ、……未練だが、拙者には諦めきれぬ」

「泣くな、町は満足して死んだ筈だ。