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かがくとぶんか
科学と文化
中谷 宇吉郎
「文学界」1937(昭和12)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,859 字 · 8 页
科学は決してアルカロイドのようなものではなく、即ち極少量注射したら瀕死の病人が生き返るというようなものではなくて、実際は米かパンのようなもので、毎日喰べていて栄養のとれるものなのである。科学というものは、整理された常識なのである。もっともこんなことをいっては、この方面の議論をしておられる一部の文学者の叱責を買うかも知れない。それだったら文句なく兜をぬぐつもりである。物理学者が文学者と文章を用いて太刀打ちするのは対等の力では問題にならない。
とにかく以上の議論を認めるとしたら、それでは自然科学を広い意味での文化の向上に役立たせるには差し当りどうしたら良いかという問題が残る。それに対しては極めて平凡であるが次のような解決があると思う。それは科学の既知の知識と、科学的の考え方との正常な普及をはかることである。もっともこのこと自身には誰も異論はないと思うが、困難はその実行にある。それで問題は科学の既知の知識と科学的な考え方との両者を広く間違いなく伝えるにはどういう方法を採ったら良いかという点にあるのである。その点について私見を述べるのが本文の目的なのであって、今までの所は実はどうでも良いことなのである。