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かがくとぶんがく
科学と文学
寺田 寅彦
「世界文学講座」1933(昭和8)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 页
そういうものになると探偵小説はほんとうの「実験文学」とは違った一つの別派を形成するとも言われるであろう。そういうこしらえ物でなくて、実際にあった事件を忠実に記録した探偵実話などには、かえって筆者や話者の無意識の中に真におそるべき人間性の秘密の暴露されているものもある。そういうものを、やはり一つの立派な実験文学と名づけることも、少なくも現在の立場からはできるわけである。同じようなわけで、裁判所におけるいろいろな刑事裁判の忠実な筆記が時として、下手な小説よりもはるかに強く人性の真をうがって読む人の心を動かすことがあるのである。
これから考えると、あらゆる忠実な記録というものが文学の世界で占める地位、またその意義というような事が次の問題になって来るのである。
記録としての文学と科学
史実というものは文学を離れては存在することが困難なように思われる。単なる年代表のようなものはとにかく、いわゆる史実が歴史家の手によって一応合理的な連鎖として記録される場合は結局その歴史家の「創作」と見るほかはない。「日本歴史」というものはどこにも存在しなくて、何某の「日本歴史」