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かがくとぶんがく

科学と文学

寺田 寅彦

「世界文学講座」1933(昭和8)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 页

青空文庫

それから、自分の知っている狭い範囲内でも、まだ世に知られない立派な科学者随筆家は決して少数ではないのである。しかし現代ではまだ、学者で新聞雑誌にものを書くことが悪い意味でのいわゆるジャーナリズムの一部であるように考える理由なき誤解があるのと、また一方では新聞雑誌の経営者と一般読者とが、そういうものの真価値を充分に認識しないのとで、この種の特殊文学はまだ揺籃時代を脱することができないようである。しかし自分の見るところでは文学のこの一分派にはかなり広い未来の天地があるような気がするのである。

科学者のに限らず、一般に随筆と称するものは従来文学の世界の片すみの塵塚のかたわらにかすかな存在を認められていたようである。現在でも月刊雑誌の編集部では随筆の類は「中間物」と称する部類に編入され、カフェーの内幕話や、心中実話の類と肩をならべ、そうしていわゆる「創作」と称する小説戯曲とは全然別の繩張り中に収容されているようである。これはもちろん、形式上の分類法からすれば当然のことであって、これに対して何人も異議を唱えるものはないであろう。しかしまたここに少しちがった立場に立つものの見方からすると、このような区別は必ずしも唯一無二ではないのである。